葉酸は、妊娠を希望する全ての女性に必須の栄養素です。葉酸は、調理による損失が大きく、体内の利用効率も低いため、サプリメントを利用してしっかりと補給することをおすすめします。
葉酸は、ビタミンB群の一つで、ほうれん草の葉の成長因子ということから、この名前が付きました。近年、妊娠初期の葉酸不足を防ぐために、厚生労働省では、1日400μgの摂取をすすめています。それは、先天障害(神経管閉鎖障害)を予防する目的です。
妊娠初期(2週〜4週)というのは、胎児の成長において最も細胞分裂が盛んな時期で、この細胞分裂が活発な時期に葉酸が不足すると、先天障害である神経管閉鎖障害を生じるリスクが高くなると言われています。
神経管とは、脳や脊椎などの中枢神経系の元になる集合体のことですが、妊娠初期に細胞分裂していくことで、胎児の脳や脊椎などさまざまな神経細胞が作り出されます。
この神経管の下部に閉鎖障害が起きると、二分脊椎と呼ばれ、脊椎の神経組織が脊椎の骨により覆われていないことから、神経組織に障害が生じ、主に下肢の運動障害や排泄機能に障害が起こりやすくなります。また、神経管の上部に閉鎖障害が起きると、脳が形成不能となり無脳症と呼ばれ、流産や死産の確立が高くなります。
近年、こうした先天障害が増えていることもあり、葉酸を摂ることで、この神経管閉鎖障害などの発症リスクを軽減することができることから、葉酸摂取が積極的に薦められています。しかし、ほとんどの方は、妊娠に気づいて(2〜3ヶ月)産婦人科などで葉酸の必要性のことを知り、それから栄養管理を始めるのが現状です。それでは、遅いということをぜひご理解ください。
葉酸が先天障害を予防する仕組みをご紹介します。葉酸は、遺伝にかかわるビタミンで、欠乏するとDNAの形成や細胞分裂が阻害されます。これは、細胞分裂を繰り返しながら成長を続けていく赤ちゃんにとっては、大変なダメージです。特に、脊椎が作られ始める3週目辺りで、葉酸が不足すると、脊椎の細胞分裂が上手くいかないということになります。
これらの事実を受けて、妊娠初期の葉酸の必要性が注目され、諸外国では、少なくとも妊娠の1か月以上前から妊娠3カ月までを葉酸摂取時期としています。でも、たいていの場合、妊娠に気付くのは妊娠してから2〜3ヶ月後。それから葉酸を摂ろうと思っても、大事な時期は過ぎてしまっているのです。 そんな実態を受けて、厚生労働省では、妊娠可能な女性は、1日400μgの葉酸を摂取するよう、指導しているのです。
葉酸は熱に弱く、調理で50%近くが分解するか、水溶性のために、茹で汁に溶出してしまいます。
食品中の葉酸の利用効率は、50%程度と見積もられています。
以上のことを踏まえると、食品中の葉酸は、最大でも25%程度しか利用できていないことになります。調理の仕方によっては、それ以下ということですから、食事からは、ほとんど摂れていない状態です。1日に必要な400μgの葉酸をほうれん草から摂ろうとすると、40gですが、それも数字の上での話です。調理で失われ、しかも吸収が悪いのですから、400μgを毎日食事だけで摂るのは至難の業です。では、どうやって1日400μgもの葉酸を摂取したらいいのでしょうか?
このように、現代の妊婦さんを取り巻く栄養環境や、葉酸不足の現状を受けて、厚労省では、2000年に「妊娠を計画している女性はバランスが取れた食事とサプリメントで、1日400μgの葉酸の摂取をすべきである」と発表しました。受胎してから、2〜4週間ぐらいまでが細胞分裂の非常に活発な時期なので、この時期に葉酸が不足すると、障害リスクが高まります。しかし、妊娠に気付くころはその時期を過ぎていることが常です。先ほども、触れたとおり、妊娠の1か月前からの摂取が望ましいのですから、妊娠を考えている女性は、その日から、サプリメントでの、葉酸の摂取を心がける必要があると言えます。
ただし、葉酸だけ入ったサプリメントを摂ることはおすすめしません。葉酸はビタミンB群の一つです。葉酸だけを多く摂っていると、ビタミンB群バランスが崩れてしまい、貧血などの問題を引き起こしかねません。葉酸を摂るなら、ビタミンB群がそろっているサプリメントを選ぶことが大切です。

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