栄養素はからだをつくる材料です。その栄養素を私たちは食事から充分に摂れているでしょうか? 
栄養素について基礎から学ぶことで、「いい食べ方」をするヒントを見つけましょう。
私たちのからだは五つの栄養素からできています。筋肉や内臓はたんぱく質からできていて、炭水化物や脂質はエネルギーへと変わります。ビタミンは、酵素や補酵素、ミネラルは骨や血液となります。
からだは、15%〜20%(体重の約6分の1といわれています)がたんぱく質、脂質は15%〜30%、その他わずかな炭水化物、ビタミン、ミネラルからできています。残りはほとんどが水分で、全体の60%くらいを占めています。
例えば、体重が50Kgの人は約8.3Kgのたんぱく質を持っていることになりますが、このたんぱく質が足りないと、筋肉や内臓、皮膚、髪、血液などによくない影響が出てしまいます。
例えば、たんぱく質の食事摂取基準量(1日に最低必要な栄養量)は、次の通りです。
1才の赤ちゃんで・・・・・体重1kgあたり2.8g
20才の男性で・・・・・・体重1kgあたり1.08g
50才の男性で・・・・・・体重1kgあたり1.19g
赤ちゃんはこれからドンドン成長していかなくてはならないので多く、また、20才よりも50才の方が多いのは、吸収する力が衰えるため、その分多く必要となります。年齢が20才で、体重が60kgの男性が、1日に必要なたんぱく質の栄養所要量は、1.08×60=64.8gということになります。
その量のたんぱく質をとるためには、何をどれくらい食べたらよいのでしょうか。例えば、焼肉200gに含まれるたんぱく質は36g位、卵一個なら6g位となります。栄養素を食事で摂ることは基本ですが、カロリーを気にする方や食事がなかなか上手く摂れない方は、栄養補助食品などを利用してバランスよく栄養素を摂るようにするのもひとつの方法です。
私たちは、食べたものを消化、吸収してエネルギーに変えたり、体を成長、維持させています。たんぱく質を真珠のネックレスに例えると、その真珠を切り離して、一粒一粒にしたとき、その粒をアミノ酸といいますが、つまりアミノ酸がつながったものがたんぱく質というわけです。消化というのは、真珠を切り離す作業のこと、つまり食べたものが分解されて細切れになるということです。
たんぱく質を食べると、消化を受けてアミノ酸という小さなものに分解され、大きなままだと取り込めないものも、小さくして体に取り込むことができるようになります。これを吸収といっています。また、成人の体は、約37兆個もの細胞からできており、細胞は常に新しく生まれ変わっています。細胞の成長にはたんぱく質が欠かせないものであり、アミノ酸として分解された栄養素が取り込まれることによって、私たちの体は形づくられていきます。
自動車はガソリンを入れるとエンジンで燃えますが、人間は炭水化物(糖質)や脂質(脂肪)をどこでエネルギーに変えているのでしょうか。細胞の中には、ミトコンドリアという電力発電所のようなことろがあり、そこでエネルギーを作っています。細胞に運びこまれた炭水化物(糖質)や脂質(脂肪)は、ミトコンドリアに運び込まれた後、コエンザイムQ10という、マッチのような働きをするものによって火がつけられ、燃えてエネルギーに変わります。からだの中ではエネルギーを作る時、体温の範囲内という低い温度でうまくエネルギーを作っているわけですが、そんなことができるのは、ビタミンやミネラルや酵素などが働いているからです。ビタミンや、ミネラルは、エネルギーをつくるときの大切な脇役となります。
       
病気というわけではないのに、疲れてしかたないという患者さんにビタミン剤が処方されることがあります。ビタミンは13種類もあり、それぞれの働きがあります。下の表をご覧ください。表にある働きの他にも、ビタミンは、たんぱく質や炭水化物(糖質)、脂質(脂肪)などの三大栄養素が働く時に、それらとバランスをとりながら副栄養素としての働きがあり、そのバランスがとても大切になります。
ビタミンA(カロテン) 夜盲症防止、皮膚、粘膜を正常に保つ、抗がん作用
ビタミンD カルシウムの吸収を促して骨を丈夫にする
ビタミンE 抗酸化作用
ビタミンK 止血、骨づくり
ビタミンC 感染防御、抗ストレス、抗がん、抗酸化作用
ビタミンB1 疲労回復、脚気防止
ビタミンB2 口内炎防止、過酸化脂質除去
ビタミンB6 貧血、皮膚炎予防、抗ストレス作用
ビタミンB12 神経障害に有効、血球づくり
パントテン酸 育毛、抗ストレス作用
ナイアシン 皮膚づくり
葉酸 血球づくり
ビオチン 脱毛、白髪予防
以下、ビタミン様物質と呼ばれるもの
コリン 神経伝達の担当
イノシトール 脱毛予防
ビタミンP 毛細血管を柔軟に保つ
例えば、市販の甘いジュースを飲んだ時、その糖質はエネルギーに変わるものと、脂肪に変わって蓄えられるものとに分けられます。糖質がエネルギーに変わるためにはビタミンという脇役が必要ですが、甘いジュースの中に、その甘さに見合うだけのビタミンが含まれているでしょうか・・・・? エネルギーに変わることができない糖質は、脂肪に変わって、体に蓄えられることになります。
栄養素のバランスには2つあり、栄養素同士のバランスと、栄養素と身体との間のバランスがあります。たんぱく質と脂肪と糖質、そしてビタミンとミネラルの5大栄養素の間でバランスがとれていて、しかも食べる人の身体と栄養素の分量がつり合いがとれている、というのがちょうどいい食べ方ということになります。
それには、一度にお腹いっぱいに食べるのではなく、腹八分目に食べ、また色とりどりに食べることが大切です。赤い食べ物、黄色い食べ物、緑色の食べ物、白い食べ物を少しづつ全部食べるようにすると結果として栄養素のバランスがとれるようになります。
ミネラルとはどういうものでしょうか。人間の体は体重の95%が酸素、炭素、水素、窒素の4元素からできていて、残りの5%がミネラル(無機質)です。体だけでなく、空気、水、ガラス、金属など、この地球上にある全てのものが、酸素、炭素、水素、窒素の4元素、そしてミネラルから構成されています。からだは5つの栄養素からできていますが、その栄養素のおおもとが酸素、炭素、水素、窒素、ミネラルです。特に、必須ミネラルといわれるものには次のようなものがあります。
多量ミネラル 微量ミネラル
1 カルシウム 6 12 18 クロム
2 ナトリウム 7 ケイ素 13 19 ヒ素
3 カリウム 8 亜鉛 14 セレニウム(セレン) 20 コバルト
4 マグネシウム 9 ストロンチウム 15 モリブデン 21 バナジウム
5 リン 10 16 ニッケル 22 フッ素
11 マンガン 17 ホウ素 23 ヨウ素
人間のからだの中にあるミネラルで、一番多いのはカルシウムです。次に多いのがナトリウム、カリウム、マグネシウム、リンです。これらはカルシウムも含めて多量ミネラルといいます。これに対して、ほんの少しあればいいミネラルを微量ミネラルといいます。この微量ミネラルには、鉄、ケイ素、亜鉛、ストロンチウム、鉛、マンガン、銅、錫、セレニウム(セレン)、モリブデン、ニッケル、ホウ素、クロム、ヒ素、コバルト、バナジウム、フッ素ヨウ素等があります。
どのミネラルも、からだに無くてはならない必須元素ですが、特に上の表の中で、青い色がついたミネラルは不足しないように摂る必要があります。黄色のミネラルは不足することはなく、むしろ摂りすぎると毒になるものもあります。例えばヒ素や錫や鉛です。
また、カルシウムとマグネシウムはそのバランスも大切です。理想の摂取バランスは、カルシウム2に対して、マグネシウム1といわれています。カルシウムとマグネシウムは1対で働きますが、マグネシウムはストレスで極端に消耗することがわかっています。また、マグネシウムは酵素の原料になっており、酵素が使われる度に消費されています。カルシウムの働きには、必ずマグネシウムが関わっていますが、マグネシウムが不足していると、カルシウムは働けません。マグネシウムを多く含む食べ物は、ナッツ類や海藻のひじきなどに多く、食べ方でいうと、洋食よりも和食の方が、平均してマグネシウムが多く摂れるようです。

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